たばこ 来月から値上げ

■成功率高く専門外来へ続々/パイプ、アメ出荷急増

たばこのほとんどの銘柄が1箱110円以上の値上げとなる10月1日を控え、禁煙外来を訪れる喫煙者や禁煙補助商品の売れ行きが増加している。値上げ後には禁煙挑戦者がさらに増加し、禁煙関連商品の売れ行きが伸びるとみられる。喫煙率の減少に拍車がかかるのは必至で、日本たばこ産業(JT)は危機感を募らせている。



◆自己流と段違い

東京・日本橋人形町のオフィス街にある「中央内科クリニック」は、JTによる値上げが発表された4月以降、来院者が急増している。禁煙挑戦者はそれまでの月100人から120人に増えた。

「なぜ、禁煙しようと思ったのか」。村松弘康副院長のそんな問いかけに、多くの患者が「10月から値上げされる」ことを理由に挙げるという。

一般的な禁煙治療では、8〜12週間に5回の診察を受ける。禁煙補助薬を含めた自己負担額は1万2千〜1万8千円程度。値上げ後のたばこのほとんどは1箱400円以上となるため、1日に1箱ペースの喫煙者なら1カ月分のたばこ代程度で収まる。

 禁煙治療の成功率の高さも来院者拡大の追い風だ。禁煙外来で処方されるファイザーの飲み薬「チャンピックス」の場合、成功率は6割程度とされ、2割程度にとどまる自己流の禁煙とは比べものにならない。村松副院長は「値上げによる金銭的負担を実感する10月以降、禁煙外来の患者はもっと増える」とみる。

禁煙外来を設置する医療機関も、禁煙治療の保険適用が始まった平成18年4月から年々増加している。この1年間で1割以上増加して約1万カ所となった。

◆機運を盛り上げ

さらに、たばこの値上げ効果は、医師の処方がいらない一般用医薬品の禁煙補助薬などにも波及している。ガムとパッチタイプの「ニコチネル」を販売するスイス系医薬品メーカー、ノバルティスファーマ(東京)は今年の売上高を前年比1割増と予想する。

禁煙補助商品を手がけるマルマン(東京)は「禁煙パイポ」の売り上げが6月ごろから増え、8月の出荷額は前年同月の2倍の約6千万円となった。5月に発売した「禁煙アメ」も好調で、発売当初に比べ出荷ペースは2倍以上だ。

禁煙機運をさらに盛り上げたい各社は今月下旬から取り組みをさらに強化する。ファイザーは俳優の舘ひろしさんが禁煙に挑戦して話題を呼んだCMの続編を放映し、ノバルティスファーマでは、ドラッグストアで働く薬剤師への禁煙指導を強化するという。

今回の値上げ幅は前回、平成18年の20円程度より大きく、JTは今年10月から来年9月までの販売本数が前年同期より25%減ると予測。減少幅は予想を超える可能性もあり、JTは今後のたばこ税増税に反対するなど警戒を強めている。