<iPS細胞>臓器作成に成功 マウス体内にラット膵臓

さまざまな種類の細胞になることができる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、マウスの体内にラットの膵臓(すいぞう)を完全な形で作ることに、東京大医科学研究所の中内啓光教授(幹細胞生物学)のチームが成功した。iPS細胞からは心臓や神経などの細胞が作られているが、正常に機能する臓器を作ったのは世界初。この方法を応用すれば、動物の体でヒトの臓器を作り、臓器移植に利用できる可能性がある。3日付の米科学誌セルに発表した。

受精3〜4日後の動物の受精卵の中に、iPS細胞を注入すると、元の受精卵が持つ遺伝子とiPS細胞側の遺伝子が混じり合った「キメラ動物」ができる。チームは、膵臓を作る遺伝子を働かないようにしたKO(ノックアウト)マウスから受精卵を作成。そこに正常なラットiPS細胞を注入、借り腹マウスの子宮に移植した。

その結果、生まれたマウスの全身はマウスとラットの細胞が混じり合っていたが、膵臓はラットの細胞だけでできていた。マウスは大人まで育ち、血糖値も正常値を示すなど機能しているのを確認。失われていた膵臓がiPS細胞由来の細胞によって置き換えられた形という。同じ手法で、マウス同士で膵臓を作ることにも成功した。

マウスとラットはネズミの仲間だが、遺伝的には異種の動物だ。これまでに異種間でできた哺乳(ほにゅう)類キメラはヒツジとヤギのみで、マウスとラットは世界初という。