<スタジオジブリ>新作アニメは高度成長期が舞台

スタジオジブリの11年夏公開の新作アニメの題材に高橋千鶴さんの少女マンガ「コクリコ坂から」が決定したことについて、スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーは15日、東京都内で開いた製作報告会見で、宮崎駿さんの意向が強く働いたことを明らかにした。時代設定は63年の高度経済成長期。会見場では「上を向いて歩こう」と書かれた駿さん描き下ろしのポスターが公開され、景気低迷する現在への駿さんの応援メッセージが込められているという。

鈴木プロデューサーは「一枚の絵が映画全体に影響を与えるときがある」と水彩画タッチで描かれた駿さんのポスターを紹介した。時代を63年に設定したのは駿さんが東映動画に入社し、働き始めた年だからだといい、「最近日本人は元気がないが、『上を向いて歩こう』じゃないですけど、前向きで進むのはしんどい時代で、後ろ向きは嫌。みんな下を向いている時代だから……と思っていたら、上があった!」と高度経済成長期に設定した駿さんの理由を代弁。ただ、「昔はよかった」という懐古趣味ではなく、あくまでテーマは現代だという。

コクリコ坂から」は高橋さんと佐山哲郎さん原作で、80年に少女マンガ誌「なかよし」(講談社)で連載されたマンガ。コミックスは一時絶版になったが、スタジオジブリの企画・編集で今年7月に角川書店から新装版が発売された。主人公の小松崎海は、おさげ髪の平凡な高校生。船乗りの父は事故で行方不明、写真家の母は撮影で海外を飛び回っており、祖母の花と妹の空、弟の陸の世話をしながら留守宅を守っていた。学校では新聞部の風間俊と生徒会長の水沼史郎が起こす騒動に巻き込まれ、家族を巻き込んでドタバタな毎日を送る、ギャグあり、ラブストーリーありの青春マンガ。マンガ自体の時代背景は不明だが、学生運動などのくだりもあり、60〜70年代とみられ、タイトルの「コクリコ」とはフランス語で「ひなげし」のこと。

アニメ化にあたり、駿さんの長男で、「ゲド戦記」(06年)を手がけた宮崎吾朗さんが監督を務め、東京五輪目前の昭和38年(63年)の横浜を舞台に女子高生の初恋物語が描かれる。鈴木プロデューサーは「コクリコ坂から」が、実は「耳をすませば」(95年)を製作したときに候補に上がっていたことを明かし、「ジブリには13年までの5年計画があって、最初の3年で2本、シナリオまではこちらで決めるから若い人にチャンスを与えようと思った。『借りぐらしのアリエッティ』(10年)を製作しているときに次作をどうするかと考えていく中で、09年12月に宮(崎駿)さんが『コクリコ坂から』、あれやろうよと発案した」とこの作品に決まった経緯を説明した。

吾朗監督にとって2作目となるが、「宮さんは、1本目はビギナーズラックがあるから2本目が大事。本当の評価は2本目で決まると言っていた」と激励しているそうで、息子の吾朗監督について「前作を作った後、続けて(監督を)やるか、(ジブリ)美術館に行くか、他の道かと三つの道を提案したとき、映画をやりたいと行った。『コクリコ坂から』は絵コンテが最終段階まで行っているが、吾朗君は67年生まれで、設定は63年だから当時の舞台をきちんと再現しようと、いろんな人を取材したり、写真集を見たりしている」と意欲的に取り組んでいるという。

公開は11年夏を予定しており、主題歌は、吾朗監督の「ゲド戦記」の挿入歌「テルーの歌」でデビューした歌手の手嶌葵さんが担当する

スタジオジブリの新作が発表されたが、宮崎氏の息子さんが監督するそうだ。今度はどんな映画になるんだろう。沼田識史(現代美術家)氏が選ぶ映画100選では宮崎駿監督の『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『紅の豚』の3本が入っている。何か最近思うことは、宮崎駿作品は初期の頃の作品の方が良かったな〜と思うことがある。ストーリーはシンプルなのに脚本がしっかりしていたように思う。